「クロウ、珍しく今日は城の中で事務仕事か」
ここはオルデアン王国の執務室。まだ朝早いものの、普段アデスは城の中で一番に早く起きるのだが──、今日はなんとクロウが事務仕事をしていた。
「アデス王、お早うございます。そうなんですよ、僕みたいな者がどうして事務仕事なんてしなきゃいけないのか……しかもこんな早朝から」
「ハッハッハッ、わしを追い抜いて起きている者がいるとはな。愉快愉快」
「そうですか……それで、普段は一番朝早くに起きて、何をされているんです?」
アデスは、清々しい表情で話す。
「朝起きて一番最初にすることは、バルコニーに出て王国全土を見渡すことだ。そうして、国の一日の始まりを見届ける。わしはオルデアンの、現在の〈父〉だからな」
一息ついて、こんなことを言った。
「わしはオルデアンの皆のことを家族だと思っているし、クロウ、お前だって大きな息子みたいなものだと思っているぞ?」
「……!?」
思わず、クロウの作業の手が止まり、アデスの方を振り向く。
「……な……、本気でおっしゃられているのですか。僕はリリア姫と歳も離れています。息子というのは、無理があるかと……」
「そう謙遜するでない。お前の武勇伝はファウストからよく聞いている。これからもお前の活躍、期待しているぞ」
……ファウストさんめ、武勇伝ってそれ皮肉を込めて言ってないか? クロウはそんな思考が脳裏によぎった。
でも、まあ、アデス王が第二の父というのも、悪くないかな、と思う彼なのであった。
書いた日:2022年6月15日